G線上の魔王 ハルルート感想・総評

無事にクリアしました。

順当に椿姫→花音→水羽→ハルとプレイしましたが、椿姫・水羽はハルルートを先にクリアしてからの方がよかったかな。花音は前後どちらでもよい。理由は後述。

総評

評価:★★★★★★☆☆☆☆

途中途中で「面白い」「続きが気になる」と思わせられるところはありました。
でも「このゲームは面白かったか?」と言われると、うーん…

登場人物の行動やトリックに引っかかりを覚えることが多く、本作の目玉であるハルルートには感動できなかったので、あえて低めで。

テキスト

特に気になることはなかったです。
昔のエロゲらしくシンプル。

キャラクター
椿姫

何度でも言うけど、家族の絆ではなく毒家族による洗脳にしか見えない。
葉っぱキメていようが家から脱出するBADエンドこそGOODエンド。

花音

天真爛漫ワガママ娘に見えて、自らそう振る舞うことでしか生きてこれなかった。
こういう裏のあるキャラはけっこう好きです。
ルート終盤も熱かった。ただしエピローグはいまいち…

水羽

水羽ルートのしょうもない茶番、三年後展開と姉妹感動の再会には置いてけぼりでポカーンとなってしまったのだが、 四章ハルルートでの姉妹の絆にはホロリと来ました。ライターの作為を感じつつも…(幼女が愛情を示す際に「大好き!」じゃなくて「私は味方だよ!」と言うのは、将来姉が孤立無援の時に回想させる気満々でわざとらしすぎるなあと…)
最後の例の場面、ヒロインたちの主人公への語りかけをしらーっとした気分で読み進めていたけれど、水羽の時だけちょっとじーんとなったので、あっ私ブログでぼろくそ書いたけど水羽のこと好きだったんだな、と自覚しました。
というわけで好きですよ笑

ハルルートで姉妹の心情を把握したうえで水羽ルートを進めたら、もう少しついていけてたのかもしれない。
あと、水羽ルートの後で四章を進めると、事件がけっこうダラダラ長いので、「警察を呼んだら一瞬で済むのになあ」とうんざりしてしまったということもある。

ユキ

北都南はロリよりお姉さん演技の方が好き。
思い返せばユキ関連のシナリオがいちばんよかったかも。尋問はわくわくしたし立てこもり事件の犯人には意表をつかれたし。

しかし最初の頃のレズムーブなんだったんだろう…漫画とかでよくある初期のキャラ付けが後半でなかったことになっているみたいなやつ? 連載漫画は修正がきかないけどゲームなんだからカットすればいいのに。
ユキルートあってもよかったな。警視正の養女とヤクザの養子でロミジュリ展開もできるし、主人公といちばんお似合いな気がする。
立ち絵のポーズが変(気を付けの姿勢で手のひらを前に向けている)だからあんまり上着を脱がないでほしかった。

栄一

虚言癖はしんどかったけど、シリアスな場面ではきちんと相手を気遣ったり、京介がダークサイドに落ちかけるのを察して声をかけたり(四章の立てこもりの時ね)、なんだかんだ良い友人キャラでした。

権三

義理の息子が組員を私物化したり仕事で失敗したり反抗したりとどんなオイタをしてもゲンコツで許してくれる優しいパパリン。 いやマジで。 ゲーム開始からまっすぐ椿姫ルートに進むと、パパリンの優しい一面がまったく出てこないので、京介が獣の王だ怪物だとまで称し、己と母を地獄に追いやったおそろしい男に父親の愛情を求めるわけわからんやつになってしまう。なので、椿姫もハルの後に攻略すればよかったな。
悪役としてどうかはさておき、声は好きですね。

ハル

誘拐事件の感想で、どうしてハルは魔王と疑っている京介に見張りを託したのか?という疑問を書きましたが、

ハルは、口では京介を疑うようなことを言うが、内心では愚鈍なまでに京介を信頼していた。

五章で出たね…答えが…
では、今までのコロンボムーブはなんだったのか? という疑問にも答えが用意されていて、宇佐美の娘だと気づかれたら嫌われると思ったから、今でも京介が好きなのであわよくばという気持ちで幼馴染であることは黙っていた、とのこと。
つまり数々のウザキャラムーブは、彼女的には普通に真っ当なアプローチだったわけですね。こじつけ感がすごい。
おそらくライターは、主人公とヒロインがデスノのような頭脳戦!と見せかけて実は…!というのをやりたかったと思うのだけど、そのまま突き進んだ方が私の好みだったな。

ハルは誘拐事件のあれこれで好感度が低いまま、特に上昇しなかった。
告白シーンもあんまり…身内を亡くして落ち込んでいる時に恋人でもない相手に服を脱がれても…恋愛ものでたまに見かけるシチュだけど…
髪が長い理由も、序盤のアレ本音なんだろうな、とは予想がついていましたが…いや切れよ、と。長いのと伸び放題は違うでしょ。
京介と結ばれた後にちゃんと髪を整えたらまだ印象がよかったのだが…

あとは、ユキの復讐は「殺人だけは駄目だ」と止めておいて、自分はやらかそうとして結果的に京介と娘の人生をむちゃくちゃにするのどうなの?と思いました。
あの時点で、比重は京介<魔王なんだなあーと思えて、京介とハルの恋愛としては萎えてしまう。
魔王と勇者の物語であって、勇者と仲間の物語ではないんだね…

魔王

好きなところ:声
嫌いなところ:十も年下の弟(当時小学生くらい?)に病弱な母を託して姿を消しておきながら「母を捨て金に魂を売り渡した卑怯者」となじり復讐として弟を殺人犯に仕立てるみみっちいところ。

その病床の母の治療費はどこから出ていると思っているんですかねえ…
父の五千万の借金はどうなったと思っているんですかねえ…

どうして救う対象が父親だけで、母と弟は無視なのかわからん。
母(と弟)を捨てのはお前だよ。
というか母親が病んだ原因のひとつはお前の訃報だよ。
しかもコイツすぐさま海外に飛んだから「殺人犯の家族」という辛酸はひとつも舐めていないからな。
京介にも嫌いなところはあるけど、世間のバッシングと壮絶な虐めを受け、村八分にされ、極貧生活に喘ぎ、息子のためにちっぽけな日用品を得るのに身売りする母を目の当たりにして、彼は彼なりにできうる限りのことをやっていると思う。

地下施設で鬼ごっこするあたりから、ハルをなぶって苦しめて楽しんでいるの、この執着はもうこれ恋じゃんと思ってしまった。
最後は好きな娘と弟が結ばれるのを邪魔して終わり。
うーん。小さい。
個別ルートで京介が愛を知ったからとか言って消えるのって、京介に失恋したハルとの鬼ごっこに夢中になってんじゃないの…

正体判明するまでは好きでした。

京介

わりかし好きなタイプの主人公。
水羽ルートでは特に何もやっていないのだけど、振る舞いがかっこいいなーと思えました。
ただ、悪にも善にもなりきれない中途半端なやつだな、とは…
頭もそんなに切れないし喧嘩に強くもないし…

ハルは、京介くんを補佐してあげて。いままでずっとそうだったんでしょう?

四章でユキがこう言うのだが、逆だよね…
最初に京介=魔王が示唆された時は「じゃないと主人公に出番と見せ場がなさすぎる」と思ったものでしたが、その通りになってしまった気がする。

最終章について

好き合っている二人の片方の事情で「相手に迷惑がかかるから」「自分と結ばれない方が相手の幸せになるから」と別れようとする展開が、私は嫌いです。
独りよがりで身勝手な自己満足にすぎないと思う。
二人の問題なのに、何が幸せなのかは個人の主観によって決まるのに、話し合いもせずに押し付けるのやめーや。
一緒にいることで先々傷つくにしても、事情を話さずに乱暴に突き放したら今の時点で傷つくじゃん。プラマイゼロ。しかもたいてい元鞘におさまるからトータルはマイナス…
ハルルートがまさにこれ。
面会の場面で、なるほどライターはこれがやりたかったがためにこの展開にしたんだなあーと、ひしひし感じました。

最後の再会はただのバッドエンド。
八年を犠牲にした京介はもちろんのこと、身寄りなしでシングルマザーとして私生児を生み育てたハルの味わった苦労は大きいものでしょう。
祖父は四人殺害、伯父は未曽有のテロの首謀者、父はヤクザで殺人犯というとんでもないハンデを背負った娘もやばい。
京介はヤクザと縁が切れたと言っているから裏社会のコネも特にない…
ていうか二億の借金+八年間の利子…

ハルの魔王>京介な行動と、魔王の恋心(笑)を感じてしまった身としては、京介とハルの純愛エンドではなく、京介の完全な敗北エンドじゃない?という感想しか出てきませんでした。

追記
・組の弁護士を頼ることを諦めずに打診していれば組の人間とコンタクトを取れたのでは
・堀部は京介を認めるような言動を取っていたし何か手を貸してもらえたのでは
・少なくとも組長の仇を討ったとふかせば動く人間はいたのでは
・落とし前をつけた京介を仰ぐまではいかなくても神輿にしようとするやつくらいはいるのでは
・組が動いたら弁護士つくし伝手のある警察もマスコミもいくらか操作できるのでは
・凶悪犯に堕ちた兄を涙を呑んで断罪したヒーローとかストーリーを作れば世間は味方につくのでは
私ですらこのくらい思いつくのだから、解決の筋道はいくらでもあったと思う。
京介が何とかしようともがいたけど駄目だったという描写があればまだ少しは納得できたけど、弁護士に連絡つけようという努力すらせず一切何も行動しないで済ませる手抜き感がすごく嫌い。「感動感涙の面会とお迎えのシーンがやりたいから解決させたくない!」というシナリオの意図が透けて見える。
自己陶酔して打ち合わせもなしに悪者ぶって「泣いた赤鬼」をやろうとして失敗。ハルが娘を産んだことで京介の八年の刑期は無駄。京介の計画が水の泡になった以上はハルと娘の八年も無駄な苦労。自己満足・自己陶酔によって時間を無駄にしたどころではなく、借金と娘の重荷を増やしただけなのがイラつく要因。