月影のシミュラクル -解放の羽- 感想

伝奇ホラーに惹かれて買いました。
批評空間で中央値80点だったのもあり、期待しつつプレイ。

夏休みに何年も足が遠のいていた故郷に帰る →  絶対何か起こるやつ!
人形を使った結縁の儀式に花婿役で参加する → 人死ぬやつ!!
顔に包帯を巻いている車椅子の当主 → スケキヨ枠!!!

と、開幕テンション爆上がり。
あと、恐怖と不安を煽る系のBGMがかなり秀逸なので、怪奇現象が起こる中で右も左もわからない序盤は本当に怖かったです。

以下レビュー。
先に批評空間で思いの丈をぶつけてしまったので、そちらと被っている箇所もあります。

総評

評価:★★★★★★☆☆☆☆

まあまあ楽しめたけど大いに不満ありという感じ。
前半は伝奇ホラーとしての雰囲気はすごく良かった。人形を使った奇妙な因習の不気味さ、バッドエンドを繰り返すごとにだんだんと謎が解けていく流れは好きです。
最後がちょっとひどすぎた…
ヒロインは、幼馴染の零にはいろいろグッときました。

演出

ゲーム中は立ち絵が動く動く。
シルエットがクルクルッとなるところは特に「おおっ」となりました。
ただ、シリアスシーンでギャグ顔を使うのはやめてほしい…
あと、エロのフィニッシュ時に集中線が出て画面が揺れるのは微妙すぎ。男性にはうれしい演出なんだろうか? 謎…
コンプすると立ち絵が全部見れるのは、はじめて見るおまけかも。
没差分?も見れてよかった。

テキスト

批評空間ではテキストも評価が高いようなんですよね~。
確かに、読みやすい言葉を選んで書かれているとは思う。ただ、読み進めるほどに「ん?」と思うところが…
文法が間違っているとか、Aの話をしていると思ったらBの話をしていたことが何度もあったし、同じ言葉を繰り返し使うから余計に訳がわからなくなる。

いちばん意味不明だったシーン

零 「魂を人形に移してる間は、~と言ったわよね」
誠一「……ああ」
零 「では魂を移す場合はどうかしら?」

私「?????」

キャラとシナリオ
美優

完全に蚊帳の外だけど、まあ、かわいいのでOK.
怪奇現象で登場人物が消えたり死んだりすると、後で警察にはどう言い訳するのかなあ…というのがいつも引っかかるので、後日談がなくて残念でした。
美優これ絶対捕まるだろ…

一葉

見かけに反していろいろ用意周到な腹黒ってとこは好き。
調査ごっこは何がしたいのかよくわからなかった。屋敷の中をちょろっと探るだけなのに、体を使ってまでやること? としか…
初恋のお兄さんに何とか構ってほしかっただけと言われれば納得できる。
お尻スチル、ケツだけ見せられても反応に困る。

声の演技がめちゃくちゃうまい。
一葉ルート、死を覚悟した零がいつもどおりに冷静に対処しようとして、でも声が震えるのを抑えきれないという感じが最高でした。
場面としては、炎の中で紅と対峙している時に誠一を想うところが好き。
下ネタにも平然と切り返していた零が、両想いになってからちょっと動揺を見せるのはとってもかわいい。私は幼馴染属性は持っていないんだけど、あえて言葉にしなくても信頼し合える関係がよかった。
プレイ途中でメインヒロインは紅だと知って、萎えて少し中断したくらい。

振り返ると、紅以外は完全にサブヒロインであり、TRUEへの布石に過ぎないのだが… 零との逃避行が私にとっての真エンディング。

肩か首を痛めてる系イケメン。
美優ルートで「また明日」と言っておきながら、次の日から別の用事があると姿を見せないのが不自然で気になった。
ただのご都合キャラに終わったので、もうちょっと本筋に関わらせてあげてほしかったかな。

おじさん

絶対スケキヨると思ったのに…

紅+主人公

最初に主人公の立ち絵が出てきた時はブッッッッッと思いました。
スチルではちゃんとイケメンで安心した。TRUEラストのスチルだけはちょっとひどいが…

主人公は作中でやたらめったら人格を持ち上げられるのだが、「うーん、そんなに? まあ零が言うならそうかもね…」くらいの感想でした。紅ルートまでは。
紅ルートに入ると、主人公は一回にゃんにゃんしただけで紅にどっぷりハマってしまうのですね。その後は延々とヤッてるだけ。
ループしているわけでもなし、さほど会話してもいないのに、いつ紅を好きになったんだろう。幼い頃の思い出エピソードも大したものではない。(紅が主人公に執着する理由となったのは理解できる。)

構成としては、プレイヤーならここまでのエンディングの積み重ねによって紅に何かしらの感情は抱いているはずなので、それを前提として序盤の馴れ初めイベントは省略してテンポよくした…という感じなのかなあ。
と、メタ的な考察をしながら進めていたら、紅とのエロエロ生活を咎められた主人公が「俺は取り憑かれてなんかない!!!」「紅とはわかりあえるんだ!!!」などと知性を忘れて叫びだし急にIQが下がってしまった。
受け入れられるかは別として、まずは普通に筋道たてて話せばいいのに。

そもそも紅に入れ込む主人公に感情移入できないので、そこからはしんどかった。主人公が熱くなるほど、紅が切ない感情を訴えるほど、シラーッとなってしまう。
さほど無茶をとおさず、さくっと終わる陰祭エンドはわりと好きかな。

おおむね主人公への不満になってしまったけども、紅はいちヒロインとしてはふつうくらいに好きです。※TRUEのぞく
主人公を煽ろうとして空振りしてむくれるところがかわいい。

TRUEエンドについて

伝奇もの怪奇もので、恐怖の対象や因縁の解消を明確に描写されると、たいていご都合主義感に萎えてしまう…

IQ下がったままの主人公が、思いつきの行き当たりばったりを実行し、

爪の下に、身を投げ出す。
神に声を届かせようとする、人々が行う切なる慟哭――
それは、祈りと呼ばれていた。

と、最後はやたらポエティックな土下座で解決。
このライターがよくするポカで、直後に主人公は紅と手をつないで並んで立っているし…

紅は人形としての役割から解放され、人間になってハッピーエンド。
本人の意思ではないのだとしても、たくさん殺しておいて特に償いなし。
家に火を放たれ両親を殺された人、親族が殺されて仕えている主人に一生ものの怪我を負わされた人、妻と友人を殺された挙句に全身大火傷を負った人、母親を殺されて父親は介護生活になった人、全員ニコニコして紅を許してお嬢様だ娘だ姉妹だと受け入れて、何かこの世界おかしくない?
紅も、もうちょっと悪びれようか…

と、ぐちぐち書いたけど、紅ルートとTRUEエンドが気に入らなかっただけで、この文字数の熱量くらいには面白かったということなのかもしれない。
たぶん…